はじめに:善意の「手伝い」がトラブルに
「母の年金を代わりに引き出しているだけ」
「父の口座から生活費を払っているだけ」
――そんな“家族の手伝い”が、後々トラブルになることがあります。
近年、高齢者の財産をめぐる家庭内トラブルや、親族間での誤解・紛争が増えています。
実は「家族だから大丈夫」と思っていても、法的には他人の財産を扱うことになるのです。
通帳の「代理使用」はグレーゾーン
親の通帳やキャッシュカードを代わりに使うことは、一見すると便利ですが、法的には本人の委任がない限り“無断使用”とみなされる可能性があります。
特に注意が必要なのは次のようなケースです。
- 親の口座から現金を引き出して介護費用を支払っている
- 年金や預金を「本人のために使っている」として管理している
- 家族間で使途についての書面や記録を残していない
もし、将来親が判断能力を失った場合や、相続時に他の相続人が「不正に使われた」と主張した場合、返還請求や刑事トラブルに発展するおそれもあります。
「財産管理契約」とは?
こうしたトラブルを防ぐために有効なのが、「財産管理契約(ざいさんかんりけいやく)」です。
これは、本人が元気なうちに信頼できる人(家族・行政書士・弁護士・司法書士など)に、財産の管理や生活支援を任せる契約です。
特徴
- 判断能力があるうちに契約可能
- 公正証書で作成するため、法的に明確
- 契約内容を自由に設定できる(生活費の支払い・通帳管理など)
つまり、「今は元気だけど、将来のために安心して任せておく」ための制度なのです。
任意後見契約との違い
「財産管理契約」と「任意後見契約」はよく似ていますが、発動のタイミングが異なります。
| 契約の種類 | 発動のタイミング | 主な内容 |
|---|---|---|
| 財産管理契約 | 本人が元気なうちから | 通帳・年金・生活費の管理など |
| 任意後見契約 | 判断能力が低下した後 | 介護施設契約や入院手続きなど |
この2つをセットで契約することで、「今から」「もしものとき」までを一貫してサポートできます。
財産管理契約で決められる内容の例
財産管理契約では、具体的にどんなことを任せたいかを細かく取り決めることができます。
- 預金・年金などの入出金管理
- 公共料金や税金の支払い
- 医療・介護費の支払い
- 郵便物・書類の受け取り
- 不動産や賃貸契約の管理 など
契約内容を公正証書に明記しておくことで、家族間の誤解を防ぎ、透明性のある財産管理が可能になります。
実際によくあるトラブル例
- 通帳を預かっていた子どもが「介護費に使った」と主張するも、記録がなく疑われた
- 親の認知症が進行し、他の家族から「無断で引き出している」と指摘された
- 家族間で「誰が管理するか」をめぐって揉めた
- 相続の際に、過去の出金を巡って争いに発展した
これらの問題は、契約と記録でほとんど防ぐことができます。
手続きの流れ
- 行政書士など専門家への相談
家族構成や財産状況、希望する支援内容を整理します。 - 契約書の作成
管理範囲・期間・報酬などを明記した契約書を作成。 - 公証役場で公正証書に
公証人立会いのもとで正式な契約にします。 - 契約後の実務
通帳管理や支払い代行を、契約内容に基づいて実施。
行政書士・司法書士・弁護士など第三者を入れることで信頼性が高まります。
行政書士としてお伝えしたいこと
高齢の親を支える気持ちは尊いものです。
しかし「善意の手伝い」がトラブルを招くこともあります。
財産管理契約を結ぶことで、家族の信頼関係を守り、安心して支援できる環境を整えることができます。
まとめ
- 通帳の「代理使用」は、法的にトラブルになる可能性あり
- 財産管理契約で“安心して”家族の財産を管理できる
- 公正証書にしておくことで証拠が残り、争いを防げる
- 行政書士が契約書作成から公証役場手続きまでサポート可能
おわりに
「親のために」と思ってやったことが、後で“誤解”に変わらないように。
財産管理契約は、家族の信頼を守るための大切な備えです。
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ごあいさつ
私は、障がい福祉サービスに特化した行政書士として、これまで多くの事業者様の立ち上げ・運営支援に携わってまいりました。高齢者や障がいのある方
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