はじめに
「死因贈与(しいんぞうよ)」という言葉を聞いたことがある方は少なくありませんが、その具体的な内容や遺言との違いについて正しく理解されている方は多くありません。相続や財産の承継を考えるときに、遺言と並んで選択肢となるのがこの「死因贈与」です。
本記事では、高槻市で民事業務を専門に取り扱う行政書士の立場から、死因贈与の仕組み、メリット・デメリット、注意点などを詳しく解説いたします。将来の相続トラブルを防ぐための参考にしていただければ幸いです。
死因贈与とは?
死因贈与とは、「贈与者が亡くなった時に効力が生じる贈与契約」のことを指します。
通常の贈与は「今すぐ財産をあげます」という性質を持っていますが、死因贈与は「私が亡くなったら、この財産をあなたに譲ります」と約束する契約です。
たとえば、ある方が「自分が亡くなったらこの自宅を長男に譲りたい」と考えた場合、遺言書を作成する以外に「死因贈与契約」を結ぶという選択肢もあるのです。
遺言との違い
死因贈与と遺言は、どちらも「人が亡くなった後に財産を受け渡す」という点で似ています。しかし、その性質は大きく異なります。
- 契約か一方的意思表示か
- 死因贈与は「契約」であり、贈与者と受贈者の合意が必要です。
- 遺言は「一方的な意思表示」であり、受遺者の同意は不要です。
- 撤回のしやすさ
- 遺言は原則として何度でも書き直し・撤回が可能です。
- 死因贈与は契約であるため、受贈者の同意なしに一方的に撤回するのは難しくなります。
- 受贈者の権利の安定性
- 死因贈与では契約時点で権利が確定するため、受贈者にとって安心です。
- 遺言の場合、亡くなる直前に撤回される可能性もあります。
死因贈与のメリット
死因贈与を選択することで、以下のようなメリットがあります。
- 権利が確実になる
契約で合意しているため、後から「やっぱりやめた」と一方的に撤回されるリスクが低く、受贈者にとって安心です。 - トラブル防止になる
遺言の場合は、亡くなった後に初めて内容が明らかになるため、相続人同士で争いが起こることも少なくありません。しかし死因贈与は、生前に受贈者と合意しているため、周囲への説明や理解を得やすくなります。 - 不動産承継に便利
不動産を死因贈与契約により譲渡すると、贈与者の死亡後に速やかに登記申請が可能です。相続登記よりも手続きがスムーズに進むケースがあります。
死因贈与のデメリット・注意点
一方で、死因贈与には注意すべき点もあります。
- 税金の問題
死因贈与によって取得した財産は、基本的に相続税の課税対象になります。しかし契約の仕方によっては贈与税が課されるケースもあるため、注意が必要です。税務上の取り扱いは遺贈と同様ですが、専門家に確認することをおすすめします。 - 契約の撤回が困難
死因贈与は契約であるため、贈与者の一方的な都合で撤回することはできません。生活状況や家庭環境の変化に応じて柔軟に変更したい場合は、遺言の方が向いていることもあります。 - 遺留分の侵害に注意
相続人には「最低限の取り分(遺留分)」が法律で保障されています。死因贈与によって特定の人に多くの財産を渡すと、他の相続人から「遺留分侵害額請求」をされる可能性があります。 - 契約書の形式の重要性
死因贈与を確実に有効なものとするには、公正証書による契約書の作成が望ましいです。口約束や自筆のメモでは、後々トラブルのもとになります。
実際に利用されるケース
死因贈与は、次のような場面でよく利用されています。
- 長年一緒に生活してきた配偶者に、自宅を確実に残したい場合
- 子どもが複数いるが、特定の子に財産を確実に譲りたい場合
- 相続人以外(内縁の配偶者、孫、知人など)に財産を譲りたい場合
- 相続人間での争いを未然に防ぐために、生前に合意を得ておきたい場合
まとめ
死因贈与は、遺言と並ぶ財産承継の手段として大変有効です。受贈者の権利が契約時点で確定するため安心感がある一方で、撤回のしにくさや税金面での注意が必要です。
高槻市でも、相続や遺産承継に関するご相談は年々増えています。大切な財産をどのように承継するかは、ご自身の人生をどう締めくくるかという大きなテーマでもあります。
死因贈与を検討される際は、契約書作成や税務面、相続人への説明などを専門家に相談することを強くおすすめします。行政書士は、公正証書の作成サポートや相続全般の手続きについてアドバイスを行うことができますので、どうぞお気軽にご相談ください。
事務所名:乾行政書士事務所
代表者:乾 公憲
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ごあいさつ
私は、障がい福祉サービスに特化した行政書士として、これまで多くの事業者様の立ち上げ・運営支援に携わってまいりました。高齢者や障がいのある方、そのご家族が安心して暮らせる地域づくりを支援することを使命とし、制度理解から各種申請、運営の課題まで、丁寧かつ実務的にサポートしております。
このたび、より幅広いニーズにお応えするため、遺言・相続・死後事務委任契約・成年後見制度の利用支援など、民事法務の取り扱いも開始いたしました。とくに、福祉の現場に近い立場で業務を行ってきた強みを活かし、ご本人の思いやご家族の不安に寄り添った法的支援を心がけております。
障がい福祉と民事業務の両面から、「支援が必要な方々の権利と暮らしを守る」ことを目指し、地域に根ざした専門家として真摯に取り組んでまいります。どうぞお気軽にご相談ください。
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